【論文】親からの教育的メッセージが子どもの自尊感情に及ぼす影響

 

 

親からの教育的メッセージが子どもの自尊感情に及ぼす影響

田宮由美

要約

親が子どもに対して言う、躾や教育的な言葉である拮抗禁止令(Injunctions)は、肯定的な面が強いが、その中でも繰り返し伝えられ、否定的な関わりになるドライバー(Driver)と、そのドライバーを緩める役割をするアロワー(Allower)は、果たして自尊感情の形成に影響を及ぼしているか、100人にアンケートを取り、関係性分析を行った。その結果、若い世代は、親から受けるドライバーと自尊感情に関連が示唆された。そして年齢が高くなると親からの言葉の影響と自尊感情には関連が見られないことが示唆された。またアロワーはドライバーを強く受けている場合のみ、ドライバーを緩め、許可を与える効力が表れる傾向が示唆された。

 

キーワード

自尊感情,ドライバー,アロワー,教育的メッセージ

 

1 問題と目的

親は子どもにさまざまな願いや望みを持ち、期待を抱く。そして子どもが将来、幸せな人生を送ることや、健やかに成長することを願って、躾や教育的メッセージ(拮抗禁止令)を含む言葉をかける。たとえば常に完全を目指し「きちんと最後までやりなさい」や遅刻させないために「早くしなさい」などである。これらは、子どもに躾をしたり、教育的なことを教えるために発する言葉で、励ましになったり、発達の援助となることを願い、親は言うことが多い。しかし実際はどうだろうか。筆者は子どもに関わる職場への勤務、ボランテイア活動などを通し、多くの親子に関わってきた中で、それらの言葉を繰り返し言われ続けていた子どもが、大人になった時、親の言葉通り成長しているか、疑問を感じた。そこで、躾や教育的なメッセージのつもりで、親が子どもにかけている言葉で、特に脚本に影響の強いドライバーになる可能性のあるメッセージと、それを緩める働きをするアロワーに注目し、脚本の表れた一つの状態である自尊感情に、躾や教育的メッセージおよびドライバーが影響するかを検討する。

子どもは成長と共に、養育者と1対1の関係から家族、やがて保育園幼稚園の集団と、世界を広げていく。その中で親は子どもが社会に適応するように躾の言葉や教育的なメッセージを送る。その言葉は、子どもに関心を強く持つ親の関わりの表れで、子どもの将来への期待や、願望も多く含まれている。Rosenberg(1965)によると、「青年の自尊感情 には親との関係が重要であり,親から関心を向けられることが自尊感情を高めることにつながる」という。しかし反対に、「親の期待は重圧となり、大人になってから、精神的健康を損なう要因となりえると考えられる(春日・宇都宮,2011)」という意見もある。

親の言葉は、子どもを取り巻く環境を作り、子どもの心身の発達に影響を及ぼす。そのことを子育てと親和性の高い交流分析を用い、検討する。子どもが幼児期、児童期に親から受けた言葉の中の駆り立てられる言葉とそれを緩める言葉が、子どもの「自尊感情」の形成に果たして影響を与えているか、TAの人生脚本、ドライバーとアロワーを用い、研究実証することにした。これは、多くの保護者的立場の人達や子どもに関わる職業に就いている人々に役立ち、子ども達の健やかな成長を助けることに意義があると考える。

 

2 研究方法

親が、躾や教育のためと思って子どもにかける教育的メッセージである拮抗禁止令の中でも、ネガティブな脚本に強く影響を与え、駆り立てる言葉であるドライバーと、それを緩めるアロワーに注目をした。それらは自分をありのまま認め、自己受容できる自尊感情(Self-esteem)に影響を与えているか仮説を立て、その後「現在の自尊感情について」と「子どもの頃、親から受けたドライバーとアロワーの記憶について」のアンケートを取り調査し、そのデータの分析、考察を行った。

(1)研究の仮説

親は子どもに、「きちんと躾や教育を身につけさせなければならない」と思い、子どもに発する教育的メッセージ(拮抗禁止令)がある。その中でもネガティブな脚本に強い影響を与えるドライバーは、子どもの気持ちを駆り立たせ、ありのままの自分を受け入れられず、自尊感情を低くすると考えられる。したがって、気もちを駆り立たせるドライバーになるメッセージを多く受けたと感じている子どもは、あまり受けなかったと感じている子どもに比べ自尊感情が低いのではないかと考えた。またアロワーは、許可を与える言葉であるので、アロワーを多く受けたと感じている場合、自尊感情は高まるのではないかと考えた。したがってアロワーを多く受けたと感じている子どもと、あまり受けなかったと感じている子どもの自尊感情には、有意差が見られると仮説を立てた。そして、親から受けたドライバーやアロワーの言葉の影響は、年齢を重ねるとともに、記憶の曖昧さや体験により薄れ、また書き換えられ、自尊感情への影響は弱くなるのではないかと仮説を立てた。

 

(2)研究の調査方法

①調査協力者の内訳 10歳代から70歳代までの男性20人、女性80人の合計100人
年代別内訳 10歳代3人、20歳代4人、30歳代15人、40歳代40人、50歳代21人、
60歳代15人、70歳代2人

②調査期間 2019年4月1日から2019年12月31日

③調査方法  「現在の自尊感情についての設問項目」「幼児期・学童期に受けたと感じている教育的メッセージについての設問」を記した質問紙を用意し(表1、表2参照),自身が登壇した子育て講演会の参加者全員にアンケート用紙を配布、任意で記入提出を求めた。また、現在指導している子ども達とその家族の方々、そして交流分析の勉強会に参加していた方々の協力も得た。その結果、59名分の用紙回答が集まる。

また、自身の運営しているホームページにも、質問紙を掲載。それと同時に自身のTwitterやFB等にその掲載ページをリンクし、協力を呼びかけた。そして回答が合計で100名になったところで、掲載を閉じた。

 

④使用した尺度・項目 現在の自尊感情について近藤(2013 pp.61-62)の18個の設問を用意し(表1参照)、各々に対し「とてもそう思う」「そう思う」「そう思わない」「ぜんぜんそう思わない」と4つの解答欄を作成し、自分の気持ち一番ぴったりするところに〇をつけるように回答を求めた。

 

表1. 現在の自尊感情についての設問項目

設問Ⅰ-1       ほとんどの友だちに好かれていると思います。
設問Ⅰ-2       自然は大切だと思います。
設問Ⅰ-3       運動は得意なほうだと思います。
設問Ⅰ-4       自分は生きていていいのだ、と思います。
設問Ⅰ-5       うそをつくことは、いけないことだと思います。
設問Ⅰ-6       ほかの人より頭が悪いと思います。
設問Ⅰ-7       他の人より運動がへただと思います。
設問Ⅰ-8       悪いときには謝るべきだと思います。
設問Ⅰ-9       なにかで失敗したとき、自分はだめだなと思います。
設問Ⅰ-10      自分はこのままではいけない、と思います。
設問Ⅰ-11      きまりは守るべきだと思います。
設問Ⅰ-12      友だちが少ないと思います。
設問Ⅰ-13      自分には良いところも悪いところもあると思います。
設問Ⅰ-14      しつけは大切だと思います。
設問Ⅰ-15      ほかの人より勉強がよくできると思います。
設問Ⅰ-16      ときどき、自分はだめだなと思います。
設問Ⅰ-17      健康は大切だと思います。
設問Ⅰ-18      生まれてきてよかったと思います。

次に幼児期、学童期において、親から受けた躾の言葉や教育的メッセージの記憶について、
その頻度を調査した。日本交流分析協会(2011)より5つのドライバーとそれを緩めるアロワーを元に、自身が多くの親子に関わった体験の中で、親が最もよく口にしていたと記憶している言葉を選択し、10個の設問を用意し、子どもの頃の記憶を回想してもらった。各項目について「よく言われていた」「時々言われていた」「そんなに言われなかった」「ほとんど言われなかった」と4つの解答欄を作成し、一番当てはまるところに〇をつけてもらうように回答を求めた(表2参照)。

 

表2. 幼児期・学童期に受けたと感じている教育的メッセージについての設問

設問Ⅱ-1       「きちんと最後までやりなさい」
設問Ⅱ-2       「まぁまぁできていたらいいよ」
設問Ⅱ-3       「みんなに喜んでもらえる人になりなさい」
設問Ⅱ-4       「自分を大切にしたらいいよ」
設問Ⅱ-5       「コツコツ努力しなさい」
設問Ⅱ-6       「のんびりやったらいいよ」
設問Ⅱ-7       「少しくらい痛くても我慢しなさい」
設問Ⅱ-8       「出来ない時は助けを求めていいよ」
設問Ⅱ-9       「早くしなさい」
設問Ⅱ-10      「マイペースでいいよ」    

(3)分析の手続

①尺度項目について 表1「現在の自尊感情についての設問項目」において、設問Ⅰ-2、設問Ⅰ-5、設問Ⅰ-8、設問Ⅰ-11、設問Ⅰ-14、設問Ⅰ-17は、回答の信頼性を測定する設問である。

この偏位尺度項目については、一般的に回答が4点か3点になり、合計で少なくとも18点以上になるはずである。よってこれらの6つの設問の合計が17点以下の場合、そのテストの回答者の回答は信頼性が低いということになる。今回のアンケート集計の結果、17点以下の回答者が5名あったので、その5名(60歳以上女1名、30~50歳代女4名)を除いた95名のデータを使用し、分析を行った。

 

②幼児期・学童期に受けた教育的メッセージの頻度のグループ分けについて
表2「幼児期・
学童期に受けたと感じている教育的メッセージについての設問」において、各々に対し「よく言われていた」4点、「時々言われていた」3点、「そんなに言われなかった」2点、「ほとんど言われなかった」1点とし、数値化をした。また表2において、駆り立てられる言葉であるドライバーと、許可を与えるアロワーに分類した。

ドライバー 設問Ⅱ-1・設問Ⅱ-3・設問Ⅱ-5・設問Ⅱ-7・設問Ⅱ-9

アロワー  設問Ⅱ-2・設問Ⅱ-4・設問Ⅱ-6・設問Ⅱ-8・設問Ⅱ-10

 

③自尊感情とドライバー、アロワーの高低によるグループ分け 点数の高中低に分類した。上から25%、50%、25%に分けて、上下の25%で平均値に有意差があるかどうかを調べた。(図1.表3)。

自尊感情論文

 

そして仮説を調査するため、ドライバー、アロワーのそれぞれの高低の2グループの自尊感情の平均値の違いに有意な差があるかどうかを調べた。その後、ドライバーを強く受けた人のアロワーの高低での自尊感情を分析した。

 

④全年代のドライバーとアロワーの高低による自尊感情の関係について ドライバーが高い人の自尊感情とドライバーが低い人の自尊感情の違いを調べるため、t検定を行い有意差の調査をした。同様にアロワーが高い人の自尊感情と、アロワーが低い人の自尊感情の調査も行った。

 

⑤年代別ドライバーの高低による自尊感情の関係について 20歳代以下の青少年のグループ、30歳代から50歳代までの中年のグループ、60歳代以上の熟年のグループに分けて、同様にドライバーの高低による自尊感情の有意差の有無をt検定を行って検討した。

 

⑥年代別アロワーの高低による自尊感情の関係について 20歳代以下の青少年のグループ、30歳代から50歳代までの中年のグループ、60歳代以上の熟年のグループに分けて、同様にアロワーの高低による自尊感情の有意差の有無をt検定を行って検討した。

なお、20歳代以下でアロワーに対し低いと回答した者が0名であったので、20歳代以下の検定は行っていない。

 

⑦ ドライバ―の高い人のアロワーの高低による自尊感情の関係について アロワーは、ドライバーを緩める働きをすることにより、ドライバーになるメッセージを多く受けている人のみに注目し、同様に検定を行った。アロワーを平均値で分けた高低と自尊感情について、有意差の有無をt検定を行って検討した。アロワーの平均値は図1、表3より9とする。

 

3 結果

(1)ドライバーとアロワーの高低による自尊感情との関係性について

全年代のドライバーの高い人の自尊感情とドライバーが低い人の自尊感情を2標本を使った分散の検定を行ったところ、F(30,25)=1.23,p=.302となり、有意水準5%で有意差はなかった。そこで、等分散を仮定した2標本によるt検定を行った。その結果、t(55)=.08, p=.469となり、有意水準5%で有意差はないことが示された。よってドライバーの高低で自尊感情に差があるとは言えないことが示唆された。

全年代のアロワーに関しても分散の検定を同様に行ったところ、F(40,26)=.70,p=.151となり、有意水準5%で有意差はなかった。そこで、等分散を仮定した2標本によるt検定を行った。その結果、t(66)=.90, p=.186となり、有意水準5%で有意差はないことが示された。よってアロワーのあり方が自尊感情のあり方に影響するとは言えないことが示唆された。

 

(2)ドライバーの高低による年代別自尊感情との関係性について

20歳代以下のグループのドラーバーの高い人の自尊感情とドライバーが低い人の自尊感情について、同様に分散の検定、F(1,2)=.031,p=.123となり有意差なく、t検定結果、t(3)=2.69, p=.037となり、有意差が示された。よって、20歳代以下のグループでは、ドライバーが自尊感情に影響を及ぼしていることが示唆された。

30歳代から50歳代のグループのドライバーの高低による自尊感情について、同様に分散の検定、F(21,17)=1.06,p=.458となり有意差はなく、t検定結果、t(38)=.354, p=.363となり有意差は示されなかった。よってドライバーのあり方が自尊感情のあり方に影響するとは言えないことが示唆された。

60歳代以上のグループのドライバーの高低による自尊感情について、同様に分散の検定、F(6,4)=1.25,p=.435となり有意差はなく、t検定結果、t(10)=.74, p=.238となり、有意差はないことが示された。よってドライバーのあり方が自尊感情のあり方に影響するとは言えないことが示唆された。

 

(3)アロワーの高低による年代別自尊感情との関係性について

20歳代以下のグループは、親から言われたアロワーが低いと回答した者が0名であった。そのため、検定が不可能だった。

30歳代から50歳代のグループのアロワーの高い人の自尊感情とアロワーが低い人の自尊感情について同様に分散の検定、F(35,14)=.70,p=.196となり有意差なく、t検定結果、t(49)=1.24, p=.115となり有意差は示されなかった。よってアロワーのあり方が自尊感情のあり方に影響するとは言えないことが示唆された。

60歳代以上のグループのアロワーの高低による自尊感情について、同様に分散の検定、F(4,7)=.49,p=.259となり有意差はなく、t検定結果、t(11)=.31, p=.382となり有意差は示されなかった。よってアロワーのあり方が自尊感情のあり方に影響するとは言えなないことが示唆された。

 

(4)ドライバーが高い人のアロワーの高低による自尊感情との関係性について

アロワーの高低による自尊感情の影響は見られなかったので、ドライバーなるメッセージを多く受けている人のみに注目し検定を行った。アロワーの高低による自尊感情について分散の検定、F(10,7)=2.92,p=.084となり5%の危険率では有意差はなく、等分散を仮定したt検定をしたところ、t(17)=1.44, p=.084となり、有意傾向が示された。すなわち、ドライバーが高い人のアロワーの高低による自尊感情との関係性が示唆された。

 

4 結果の考察

結果(1)より、ドライバーやアロワーは、自尊感情の形成には直接影響を及ぼしているという結果は得られなかったことは、他の要因である成育環境や社会的背景が自尊感情には影響していることが推測される。それと同時に、禁止令や許可の方が拮抗禁止令より、自尊感情に与える影響は強いとも推測される。言葉で受ける躾や教育的なメッセージより、乳幼児期に受ける非言語のメッセージである禁止令や許可が幼児決断に大きく関わり、脚本に強い影響を与えると推測できる。このことは研究結果(1)の要因の一つに過ぎないが、言葉の意味を理解していない乳幼児ではあるが、親の愛情や、反対に否定する気持ちなどは言葉より強く伝わっており、その頃の関わりがいかに重要であるかが言えるのではないだろうか。

結果(2)より、若者は親からのドライバーが、自尊感情に何らかの影響を及ぼしていることが示唆された。これは年齢が低い程、記憶が鮮明で親の言葉が子どもの自尊感情の形成に直接関わっていると考えられる。現在、親から言われている言葉が、行動や思考に直接、影響を与えていると推測される。それに対し年齢が高くなると、親から受けた言葉は、過去のものとなり、記憶も曖昧になってきている場合も多いと思われる。そして、人生の経験を重ね、自分の思考や感情が生き方に強く作用するようになり、親からの言葉の影響は徐々に弱まっていくと推測できる。特に今回調査協力を頂いた年齢の高い人はTAなどの勉強をしている人が多く、望むストロークと受け取りたくないストロークの授受を調節したり、自己実現へ向けて時間を構造化したりし、それらのミニスクリプトの積み重ねで望む脚本に少しずつ書き換えられ、過去の親からの言葉の影響が弱まっているのではないかとも考えられる。このことは、TAの哲学でもある、人は誰でも考える能力をもっていて、自分の運命は自分自身が決め、そしてその決定は変えることができるということを表しているのではないかと考えられる。

結果(3)より、アロワーは全年代、また年代別に分けても、自尊感情への影響は見られなかった。よって仮説のアロワーの自尊感情への影響は示唆されなかった。しかしこのことから、アロワーはドライバーを緩める働きをするものなので、ドライバーをあまり受けていない人には、アロワーが低くても高くても関係ないのではないかと考えた。したがってドライバーである言葉を多く受けてこそ、脚本の一つの表れでもある自尊感情に影響を及ぼすのではないかと考えられる。

結果(4)より、アロワーは、ドライバーがあってこそ、その効力を発揮するのではないかとの研究結果(3)からの推測により、ドライバーを多く受けていると回答した人のみを抽出し、アロワーの高低により自尊感情を検討した。その結果、影響があるという傾向が示唆された。アロワーは許可を与える言葉ではあるが、それは乳幼児期の許可とは違い、駆り立てられるドライバーがあってこそ、本来の働きを表し、「その気持ちを緩めても大丈夫だよ」という本人自身に、許可を与えるものであることが考えられる。日常生活の中で親は、子どもの気持ちを駆り立たせる言葉を言わない方が良いと分かっていても、躾や教育のために「早くしなさい」と急かせる言葉や、最後まで完全にやり遂げることや、努力すること、人には親切にすること、簡単に弱音を吐かないことなどは、言わざるを得ない場面もあるであろう。その場合アロワーを用い、子どもの駆り立てられる気持ちを緩めることで、ドライバーがネガティブな脚本に影響するのではなく、教育的な言葉として用いやすくなると考えられる。

 

5 結論と今後の課題

親は子どもの成長と共に躾や教育のために、拮抗禁止令である教育的メッセージを子どもに与えるが、「しっかり子どもを育てなければならない」と子育てや教育に熱心な親ほど、気づかずドライバーの言葉を多く発していると想像される。それが返って、ネガティブな脚本に影響を与え、その表れの一つでもある自尊感情の形成にもマイナスの影響を与える傾向があるように感じていた。しかし大きな有意差が見られなかったということは、それ以外の原因を考える導きとなるであろう。その要因の一つとして、言葉を習得する以前の許可や禁止令、またそれらによる幼児決断があげられる。このことは、言葉への理解や、周囲の認識が出来ないだろうと思われる赤ちゃんへの関わりが、いかに重要かが言えるだろう。また成人になってからの自己の学びの大切さも考えられる。

若い世代の者には、今、現在言われている親の駆り立てる言葉であるドライバーが、自尊感情に影響していることが示唆された。加えてドライバーの高い人にはアロワーが働いている傾向が示唆されたので、子どもにドライバーである言葉を言わざるを得ない時は、アロワーも意識して使うことが大切だと考えられる。

今回の調査分析を全体的に省みて、年代や男女の比率のバランスがとれておらず、また対象者が、子育てや心理学に関心の高い人が多く、データ結果に偏りがあったのかもしれない。広く一般の方に、アンケート調査に協力をえられるようにすることが、今後の課題として残った。今回の調査分析の結果のみで、言い切れないが、自尊感情は、親からの言葉よりも、非言語によるメッセージや生活環境、自らの学びなど諸条件が強く、それらが絡み合って形成されることが考えられる。そのことは今後同様の研究をする者にとって意義あるものになったのではないか。今回の反省点を次回に活かし、親の関わりと子どもの自尊感情の関係の調査、研究を継続しさらに深めたい。

 

文献

春日秀朗.宇都宮博.(2011).親からの期待が大学生の自尊感情に与える影響 :子どもの期待に対する反応様式に注目して. 立命館人間科学研究,B,45-55.
近藤卓.(2013).子どもの自尊感情をどう育てるか―SOBA-SETで自尊感情を測る.ほんの森出版.
NPO法人日本交流分析協会.(2011).交流分析士1級テキスト. NPO法人日本交流分析協会.
Rosenberg, M.(1965). Society and the Adolescent self-Image. Princeton University Press.

 


CiNii論文⇒

子どもの「社会に適応する我慢」の考察
子どもの自己主張と自己抑制を統制しつつ統合的に発達させる我慢の育み方


 

本論文は日本交流分析協会論文委員会の審査を経てTA実践研究に掲載され、
国立国会図書館に収められた論文です。
承諾を得て、本ページに掲載させて頂いております。
「転用禁止」お願いします。

2021年6月 田宮由美

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