【掲載論文】子どもの社会に適応する我慢の考察

子どもの「社会に適応する我慢」の考察

子どもの自己主張と自己抑制を調整しつつ統合的に発達させる我慢の育み方

 田宮由美(交流分析士インストラクター)

 

要約 

子どもは「自ら育つ力」を持って誕生してくる。しかしその力を十分発揮させるためには、「育てる力」が必要である。本論文では、養育者の育てる力が、子どもの育つ力にどのように影響を与えたか、特に子どもの「社会に適応する我慢」に注目し考察を行った。自己抑制機能と自己主張機能を調整しつつ統合的に発達させた我慢する力を身につけるには、受容的養育的NPで子どもの気持ちを受容し「我慢しなさい」と言うストロークを与えることで、その「我慢」は自己制御の我慢する力(self-control)として、子どもの身に付くという仮説を立て分析、考察を行った。10代から70代までの多様な立場の男女50人を対象とし、アンケート調査を実施。養育者の「支配的」「受容的」「理論的」「行動的」「協調的」の5つの機能をTA(Transactional Analysis)のエゴグラムを尺度とし数値化、分析を行った。その結果、幼児期、学童期に母親のNP(Nurturing Parent)からのストロークを多く受けたと記憶している人と、現在、自分を主張すべき場面で主張できると云う正の自己主張に相関が見られ、幼児期、学童期に母親のCP(Controlling Parent)からのストロークを多く受けたと記憶している人と、現在の正の自己主張に負の相関が見られた。また幼児期、学童期に母親のA(Adult)からのストロークを多く受けたと記憶している人と、現在、自分を抑制すべき場面で抑制できると云う正の自己抑制に相関が見られた実験データを得た。その結果、社会に適応する我慢となる自己抑制と自己主張を調整しつつ統合的に発達させるには親のNPとAの自我状態の機能がポイントとして関わっていることが示唆された。

 

キーワード 

我慢,自己抑制,自己制御,自己主張,統合的な発達,自我状態

 

はじめに

子どもは誕生した瞬間から、養育者のストロークを受けて、潜在能力と顕在能力の相互作用により自身の能力を発揮させ、自我を形成していく(田島,2012)。著者は長年の子どもや親子に関わる職場での勤務、また子どもに関わるボランテイア活動に携わってきた中、子どもが養育者から受けるストロークで懸念を抱いている問題がある。それは子どもに我慢する力を身に付けさせようとして与える「我慢しなさい」と言うストロークである。この「我慢」とは「感情や欲望のままに行動するのを抑え辛抱すること」(大辞林 第三版)をいう。

子どもは養育者との一対一の関係から家族へ、また保・幼稚園、小学校と生活範囲が広がる中、関わる人も増え、多様な考え方と出会う。またぞれぞれの集団には規則もあり、それらに適応していくには、自らの感情や欲望に従って行動していては、多様な考え方と折り合いがつかない、規則を遵守できないなど、社会生活に支障をきたすこともある。そこで養育者は、子どもに我慢する力を身に付けさせようと、我慢を強いることがある。果たしてそれは後に社会に適応する我慢として備わっていくのか疑問を感じ、検証していくことにした。

 

1、問題と目的 

発達は学習の積み重ねによるものであり、何かの能力を身に付けたい時、幼い頃からそのことを積み重ねていくことが習得に繋がる。しかし我慢に関しては、幼い頃より我慢を強いられ、それを反復して体験し、積み重ねてきた子どもより、そうでなかった子どもの方が成長してから社会に適応する我慢ができるのではないだろうかと感じ、仮説を立てTAの自我状態の機能分析を用い研究、説明していくことを目的とし本研究を行う。
耐えることの学習は、母と子の信頼関係が基礎にあって安定している時に成立する (礒貝.福島.1987)。母親の「受容」的態度は子どもの「根気我慢」と「情動抑制」を高める(森下.前田.2015)と子どもの耐える力は、親の抑圧ではなく、受容や母子の信頼関係が必要であると唱えられてきている。しかしそれらの交流分析を使っての研究は、子どもの我慢する力についての記事に比べ少ないのが現状である。それらを研究実証することは、多くの保護者的立場の人々に励ましを与え、子どもたちの健やかな成長に意義があると考える。

 

2、研究方法

幼児期、学童期の母親の養育態度が、自己主張機能と自己抑制機能の発達に与える影響についてTAの自我状態の機能分析を用い仮説を立て、その後「現在の自己主張機能と自己抑制機能について」「記憶の中の母親像について」のアンケートを取り、そのデータを分析し考察を行った。

 

(1)研究の仮説

①「社会に適応する我慢」とは、自己を抑制するだけでなく、自己の主張も必要であると考えた。そして「勉強しなさい」と言われ、養育者の支配的威圧的CPにより、遊びたい欲求を我慢して勉強を行うのと、「目標とする高校に入学するため」自らのAで判断し、遊びたい欲求を我慢して勉強を行うのとでは、同じ我慢(感情や欲望のままに行動するのを抑え辛抱すること)でも性質が異なると感じ、「我慢」には次の2種のタイプがあると考えた。

・親の過剰なCPが子どもを萎縮させ、強要され行う耐え忍ぶ我慢(patience-endurance)

・子ども自身がAを働かせ、自らの意志で行う自己制御の我慢(self-control )

②自己抑制と自己主張が統合的に発達している我慢とは、後者の自己制御(self-control)の我慢であると考えられる。何故なら、「幼児の『なぜ』という質問に、おとなは時には、これに応えるのに大きな困難を感じることがある」(ピアジェ,1968)とあるように、子どもは見るもの聞くものなど、五感全てから入ってくる情報に興味関心を抱き「何故?」「どうして?」という問いかけを繰り返す。そしてもっと知りたい」「試してみたい」と意欲を持ち、行動することを主張する。それらは全て、子どもの心の発達過程において、本来持ち合わせているものである。つまり子どもに我慢(感情や欲望のままに行動するのを抑え辛抱すること)を強いることは、自然な発達の過程である意欲や自己主張を「抑圧する」と考えられる。
子どもは、親から強要される我慢(patience-endurance)により、FC(Free Child)本来の自発や行動の機能を発揮できなかったり、初めは養育者に従順であったAC(Adapted Child)の機能を否定的に働かせ、無気力や反抗と云う形で発する可能性が予測される。従って子ども自身がAを働かせ、自発や行動のFC本来の働きで「自己主張」ができ、「抑制と主張」その両方の機能を調整しつつ、統合的に発達させる我慢(self-control)が社会に適応すると考えられる。

③養育者は、受容的養育的NPで子どもの気持ちを受け入れ、信頼関係を構築し、「我慢しなさい」と言うストロークを与えることで、その「我慢」は自己制御の我慢する力(self-control)として、子どもの身に付いていくと仮説を立てた。

 

(2)研究の調査方法

① 調査対象 10代から70代までの男性13人、女性37人の合計50人
・年代別内訳 10代5人、20代1人、30代4人、40代19人、50代10人、60代5人、70代以上5人、無回答1
② 調査期間 2017年9月から2018年3月
③ 使用した尺度・項目
現在の自己主張、自己抑制について4つの設問を用意し、「当てはまる」は「A」、「どちらかと言うと当てはまる」は「B」、「どちらかと言うと当てはまらない」は「C」、「当てはまらない」は「D」として、回答を求めた。(表1)

 

表1. 現在の自己主張機能と自己抑制機能についての設問項目

設問Ⅰ-1 大勢の人前でも自分の考えていることが言える。
設問Ⅰ-2 相手が話をしている時は、先ずはしっかり聞く方である。
設問Ⅰ-3 会議の時、自分一人だけ違う意見だと、発言し辛く抑えてしまう。
設問Ⅰ-4 理不尽な思いをさせられた時は、どのような場面でも筋を通そうと相手を
大声で注意する。

次に幼児期、児童期において、記憶の中の母親像の自我状態は、どの機能が高いかを調べた。TAのエゴグラムから5機能CP・NP・A・FC・ACにおいて各3項目、合計15項目設問を用意した。子どもの頃の記憶の中の母親について回想してもらい、各項目について「当てはまる」は「2点」、「当てはまらない」は「0点」、「どちらともいえない」は「1点」として回答を求めた。尚、設問は子どもの頃の母親の記憶を回想した時、よくありそうな体験や思考を考えながら、日本交流分析協会のテキストを参考にし、各機能の特徴を表すように作成(表2)、分類(表4)した。そして表記は、エゴグラムの一般的な機能を指していないので、mCP、mNP、mA、mFC、mACとした。

 

表2. 記憶の中の母親像についての設問項目

設問Ⅱ-1 母は、取り越し苦労をし、何でもない事なのに私を心配していた。
設問Ⅱ-2 母は、楽しい事が好きで、よく一緒に楽しく遊んでくれた。
設問Ⅱ-3 母は、童謡など私によく歌ってくれた。
設問Ⅱ-4 母は、私の失敗に対し感情に走らないで冷静にアドバイスする事が多かった。
設問Ⅱ-5 母は、社会規範や規則を厳守するように、常に私に言っていた。
設問Ⅱ-6 母は、愛情を持って優しく接触してくれていた。
設問Ⅱ-7 母は、父の考えに従い、私に注意する事が多かった。
設問Ⅱ-8 母は、私に責任を取ることを教え、母自身も責任は全うしていた。
設問Ⅱ-9 母は、計画を立て、計画に従って行動するように私によく言っていた。
設問Ⅱ-10 母は、私の相談にはいつも真剣に耳を傾けてくれていた。
設問Ⅱ-11 母は、善悪をはっきりさせるまで私を問い詰めることがよくあった。
設問Ⅱ-12 母は、何をするのにも、人の目を気にして私に注意をしていた。
設問Ⅱ-13 母は、私の話をしっかり聴いてから、自分の意見を言っていた。
設問Ⅱ-14 母は、その時の感情で言う事が変わることがあった。
設問Ⅱ-15 母は、私の失敗を責めたてず、おおらかに受け入れてくれた。

出典 NPO法人本交流分析協会 2級テキストTAシート自我状態エゴグラム参考

 

3研究結果
(1)自己主張、自己抑制と記憶の中の母親の具体的養育態度との相関
 ピアソン積率相関係数を利用し有意水準5%での相関を分析、限界値は0.2732である。

表3. 現在の自己主張・自己抑制機能と、記憶の中の母親の具体的養育態度との相関

 

 

 

有意水準 限界値
5% 0.2732

 

 

 

 

現在の正の自己主張と「幼・学童期、母親は自分の話をしっかり聴いた後、意見を言っていた、と記憶している」と強い正の相関(0.4409)がある。

現在の正の自己主張と「幼・学童期、母親は自分に対し愛情を持って優しく接してくれた、と記憶している」と強い正の相関(0.4353)がある。現在の正の自己主張と「幼・児童期、母親から善悪をハッキリさせるまで、問い詰められていた、と記憶している」と強い負の相関(-0.4840)がある。負の自己主張、正の自己抑制、負の自己抑制と、記憶の中の母親の具体的な言動とは相関関係は得られなかった。

 

(2)記憶の中の母親の機能分析
表4. 5機能別設問Ⅱ分類表

mCP(支配・抑圧的) 設問Ⅱ-5・8・11
mNP(養育・受容的) 設問Ⅱ-6・13・15
mA (理論・計画的) 設問Ⅱ-4・9・10
mFC(明朗・行動的) 設問Ⅱ-2・3・14
mAC(従順・協調的) 設問Ⅱ-1・7・12

記憶の中の母親の養育態度を機能別に分析するため、設問ⅡをTAにおいての5機能別に分類をした。その設問をmCP尺度~mAC尺度とした。各設問の合計点を算出し、設問Ⅰの正負の自己主張、自己抑制と、記憶の中の母親の5機能との相関の分析を行った。

結果、有意水準5%とし、限界値は0,2732であった。尚、表には相関のある尺度のみ、少数点以下第4位までを表した。

 

表5. 現在の自己主張・自己抑制機能と、記憶の中の母親像5機能別との相関

 

 

 

 

 

表6. 現在の自己主張・自己抑制機能と、記憶の中の母親像の相関が見られた機能との散布図

 

 

 

 

表5、表6より正の自己主張と母親のmNP尺度に強い正の相関(0.5368)がある。正の自己抑制と母親のmA尺度に弱い正の相関(0.3110)がある。正の自己主張と母親のmCP尺度に弱い負の相関(-0.3159)がある。

 

(3)若い年代の自己主張・自己抑制と記憶の中の母親像の5機能別養育態度との相関 

次に若い年代のみ、取り上げて分析、結果を検討した。表7は40歳代以下の者29人と、
30歳代以下の者10人を抽出し相関を調べたものである。有意水準は5%、限界値は40歳代以下が0.360、30歳代以下が0.576である。

 

 

 

 

全年代と同じく現在の正の自己主張と、記憶の中の母親のmNPとの相関が40歳代以下で0.7128、30歳代以下0.8269と、年代が若くなる程、強い相関が見られる。また全年代と同じく現在の正の自己抑制と記憶の中の母親のmAの相関が40歳代以下で0.4733、30歳代以下0.8547と、年代が若くなる程、強い相関が見られる。
現在の正の自己主張、正の自己抑制と、記憶の中の母親の特定の機能との強い相関が見られ、母親の養育態度との因果関係が示唆された。しかし現在の負の自己主張、負の自己抑制と母親の養育態度に関する尺度については、特定の相関は見られなかった。

(4)現在の自己主張・自己抑制の両方が適切にできていない者の記憶の中の母親像の傾向
今回の調査データでは、負の自己主張、負の自己抑制の両方に「当てはまる」「どちらかと
言うと当てはまる」と回答をした者は2名のみであった。その回答者に注目し、記憶の中の
母親像の特徴を探ってみた。設問Ⅱ-9「計画を立て、計画に従って行動するように私によく
言っていた」が共に0点で、設問Ⅱ-4「私の失敗に対し感情に走らないで冷静にアドバイス
する事が多かった」が共に1点と、表4.5機能別設問Ⅱ分類表のmAの項目の数値が共に低
いことが示された。また表4のmFCの項目の合計が6点、4点と共に高いことも示された。

 

4、考察
(1)母親のmNP、mAの高さが子どもの正の自己主張、正の自己抑制機能の発達を促進

結果4-1、4-2より「母親が自分の話をしっかり聴いてくれている」と感じると、自己受容感を得ることができる。また「愛情を持って、優しく接触してくれる」と感じると、安心感や充足感を得られ、気持ちの拠りどころができると考えられる。よって失敗した時でも受容される信頼感から、大勢の人前でも自分の意見がハッキリ言え、自己主張する力が育つことが考えられる。また母親自身のmAの高い言動が幼児期、学童期の子どもの自我機能にファイリングされ、子ども自身のmAが育ち、状況判断する力が育まれ、場面によって、自己主張、自己抑制する力も培われることが考えられる。そして母親のmAは、各機能本来の働きを導く役割も担っている。過保護や溺愛でなく、受容や養育と云うmNP本来の働きを発揮するようにコントロールし、親子の信頼関係も構築されていくと考えられる。

 

(2)母親のmCPの高さが、子どもの正の自己主張機能の発達を阻む

同じく結果4-1、4-2より母親の支配的mCPが高く、子どもに善悪を問い詰めたりすると、子どもは養育者の厳しい態度に精神的に抑圧されると考えられる。支配的mCPが過剰な養育者は、自分自身、厳格な親として「子どもが社会に適応できるように、我慢する力をしっかり身に付けさせなければならない」と子どもを威圧する傾向にある。その一方的な抑圧で我慢(patience-endurance)を強いられる子どもは、自己の発言や行動に、過ちがあれば親に叱責さることに恐れや不安を抱くことも考えられる。従って自らの意志で判断し、行動する機能の発達が妨げられ、自分の意見を発言することを躊躇し、正の自己主張機能の発達を阻むと考えられる。

 

(3)若い世代ほど、正の自己主張と母親のmNP、正の自己抑制と母親のmAの相関は強い  

結果4-3より、年代が若いほど、現在の正の自己主張と記憶の中の母親のmNP、現在の正の自己抑制と記憶の中の母親のmAとの相関が強く表れている。記憶は年齢とともに、自身の体験や思考により、変化する可能性が高く、よって年代が若い方が、子どもの頃感じた母親像に、より近い記憶のデータが得られると推測される。従って仮説により近い考察結果が得られたと考えられる。

 

(4)現在の自己主張・自己抑制共にできていない者の母親像は自分を優先する傾向にある

結果4-4より、現在の自己主張機能、現在の自己抑制機能が両方とも適切に発揮できていないと感じている者の記憶の中の母親像は「自分が楽しむことを好み、計画を立て、計画に従って行動することを子どもに言わなかった」と言える。養育者自身の感情を優先させ、計画性が低い事から、子どものmAの発達が促進されず、他の機能も本来の働きがなされていないことが傾向として考えられる。

 

5、結論

子どもが、我慢(感情や欲望のままに行動するのを抑え辛抱すること)を指示するストロークを養育者から受け取った時、耐え忍ぶ我慢(patience-endurance)として受け取るか、自己制御の我慢(self-controI)として受け取るかは、養育者が日常関わっている自我状態の機能で、差異ができることが本研究で示唆された。

「子どもの話をしっかり聴く」「愛情を持って優しく接触する」など、mNP本来の受容的養育的態度からのストロークを子どもが日常的に受け取ることにより、親子の信頼関係が構築される。また「失敗に対し感情に走らないで冷静にアドバイスする」「計画を立て、計画に従って行動するように子どもに言う」などmA本来の理論的客観的態度からのストロークを日常的に受け取ることにより、子どもの自我にmAの機能がファイルされていくと考えられる。

そのうえで子どもに我慢(感情や欲望のままに行動するのを抑え辛抱すること)を指示するストロークを与えた時、子どもは養育者の言葉に耳を傾け、mAを働かせてその我慢すべき理由を考えることができる。故に子どもはその我慢を自らの意志で行う自己制御の我慢(self-control)として身に付けていくと考えられる。

また「善悪をはっきりさせるまで問い詰めることがよくある」など、過剰なmCPの支配的威圧的態度からのストロークを養育者から日常的に受け取っている子どもは「養育者の指示に従わなかったり、誤った言動をすれば詰問される」と不安を抱くことが考えられる。そこで我慢(感情や欲望のままに行動するのを抑え辛抱すること)を指示するストロークを与えた時、子どもは詰問や叱責から免れるために、我慢(patience-endurance)をすると推測される。故に子どもにとってそれは耐え忍ぶ我慢(patience-endurance)になると考えられる。

強要される我慢(patience-endurance)を繰り返し経験していくと、mFC(Free Child)本来の自発や行動が抑圧されるだけでなく、初めは養育者に従順であったmAC(Adapted Child)の機能を否定的に働かせ、無気力や反抗と云う形で発する可能性も推測できる。よって社会に適応する我慢が身に付いていかないと考えられる。

養育者は子どもに我慢(感情や欲望のままに行動するのを抑え辛抱すること)を指示するストロークを与える前に、「子どものこの言動は本当に我慢させるべきか」をmAで正しく見極めることが大切だと言える。日常的に受容的養育的mNPで触れ合い、道徳的指導的mCP本来の関わりで、子どもに抑制することを伝えなければいけない。また日常の養育者のmAの言動を子どもにファイリングすることも必要である。それにより子どものmAは育ち「何故、今これを我慢すべきか」を自分自身で考えさせることも大切だからである。そうすることにより自己制御の我慢(self-control)が身に付いていくと考えられる。

「我慢しなさい」という言葉は、言い変えれば、子どもが望んでいること、行動しようとしていることを禁止する「何々するな」「Don’t do that」とも言える。幼児期の度重なる禁止令(Injunctions)は人生の脚本に強力な影響を与えることになる。それは、子どもの自由にやりたい気持ちを制限し、考えや行動に躊躇をもたらし、一人では何もできない、という傾向の脚本を書くことが多いと考えられる。子どもをありのまま受容するmNPで、無条件肯定的ストロークを与えることにより、子どもは「どんな自分も受け入れてもらえる」と感じ、失敗や過ちを恐れず自己の主張を発言できると考えられる。故に養育者が日常的に、受容的養育的mNPで子どもの気持ちを受容し関わることで、自己制御の我慢する力(self-control)として、子どもの身に付いていくという仮説が示唆されたと考えられる。

 

6、今後の課題
現在の自己主張、自己抑制について、それぞれ「肯定的な設問と否定的な設問」を用意し回答を求めたが、負の設問に関しては「当てはまらない」「どちらかと言えば当てはまらない」と回答したものが多く、母親の5機能との相関関係を得ることはできなかった。負の自己主張、自己抑制についても、回答しやすい設問に修正することと、データ数を増やすことを考え、母親の日頃の子どもへのストロークが、子どもの我慢(self-control )の構築に与える影響をさらに明らかにしていくことが今後の課題である。

 

 

文献
磯貝喜朗・福島脩美.(1987).自己抑制と自己実現.(p48).講談社.
森下正康・前田百合香.(2015).児童期の母親の養育態度としつけ方略が自己制御機能の発達
に与える影響.
京都女子大学発達教育学部紀要第11号,99-108.
日本交流分析協会.(2012a).交流分析士2級テキストシート.日本交流分析協会.
日本交流分析協会.(2012b).子育ち支援士養成講座テキスト. 日本交流分析協会.
ピアジェ.J.(滝沢武久訳).(1968).思考の心理学 発達心理学の6研究.みすず書房.

 

 


審査を経て、掲載に至った論文です。
承諾を得て、掲載させて頂いております。
転用を禁じます。
どうぞよろしくお願い致します。
子どもの健やかな発育の一助になりましたら幸いです。
2019年6月

 

次回「自尊感情」「自己肯定感」をテーマに調査、研究を深める予定です。
下記、前段階として、執筆したしました。

【投稿論文】子供の自尊感情を低くする親の否定的メッセージ

 

家庭教育・親子関係アドバイザー 田宮由美

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